へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
一連の流れを口をポカンと開けて見つめることしか出来なかったミアの視線に気がついたのか、フェンリルが一つ吠えた。
その声に体の内側から、力が湧き出てきて彼の元へと走る。
「団長……!フェンリル……!一体何がどうなってるんですか?!」
「何って、稽古だ」
何を当然な事をと長い前髪を掻き分けながら、フェンリルから降りて、素振りを始めた騎士達を見渡した。
「寝て少しは体力が回復した、そんな所か?」
「あっ!」
腕の中に抱え込んでいたリヒトの上着を手渡して、頭を下げる。返す際に僅かに触れた彼の温もりに、溢れそうになる想いをぐっと堪える。
「あの、これありがとうございます。それと……すみませんでした」
「姿が無かったから獣舎に向かってみたら、へたり込んでいるミアの姿を見て焦ったぞ。檻の中には見知らぬ魔獣も増えているし」
「召喚に成功して、新しく仲間に加わった魔獣達です。訓練も必要なしに戦闘可能な魔獣もいます」
「……ったく、俺の心配を返せ」
「え?」
「獣舎に向かったらお前は寝てるし、フェンリルには契約をせがまれるし……何が何だか」
少々イラついているリヒトに、苦笑するしか出来ないミアは、フェンリルの背から降りたリヒト達にそっと近づいた。