へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





 改めて訓練お疲れ様でしたと声を掛けると、短い返答だけを返して顔を隠す。

 フェンリルを見つめれば、何処か罰の悪そうな顔をしてそっぽを向く。そんなフェンリルの喉を撫でてやれば、満更でもなさそうな表情を隠しきれずにいた。


 やっぱり二人ってどこか似てるのよね……。


 予想外とは言え、いい形に二人が手を取り合った事に喜びを隠せずにいると、いきなり上空からグリフォンが急降下して来た。上から押さえつけるような風に反射的に目を閉じて、風が止んだ頃に目を開ければエルザがミア達の前で仁王立ちしていた。



「エルザ。そっちの訓練は終わったか?」


「ええ。中々にいい腕の持ち主達が揃っていたお陰で、指導し甲斐があったわ」



 結っていた艶やかな髪を解いて、色っぽく掻き分けてこちらへとやってくると鋭い視線を向ける。


 そうだ、団長に近づくなって言われていたのに……私ったら!


 睨みつけてくるエルザの感情を悟り、慌てふためくとリヒトは首を小さく傾げた。



「二人の関係はよく分かっています!こっ、こい、こい……びと……の、二人の仲睦まじい時間を奪う訳にはいかないので、わたっ私はここでお暇しますねっ!」



 声の大きさが急に小さくなったり、大きくなったり、声の裏返りを隠しきれなかったりと、動揺を誤魔化せない。

 とにかく愛想笑いを浮かべて、フェンリルと共に獣舎へと戻ろうと踵を返す。

 ただそうはさせまいと、力強く肩を掴まれた。







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