へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
「貴方……私の言った言葉、覚えてないのかしら?」
「えっ、あのだから、お暇しようと……」
何に怒っているのかサッパリ分からない。リヒトに近づき過ぎたのが、そこまで彼女の逆鱗に触れるとは思ってもみなかった。
でも……私だって団長の隣に立つエルザさんを見て苦しかったんだもん。そりゃあ、怒るのも当然よね……恋人なら尚更。
これからはリヒトの一人の部下として関わることを伝えようと口を開いたが、エルザの言葉によって言葉は喉に詰まった。
「それ以上、私の紳士に近づかないでよ!」
そう怒って声を荒らげるや否や、ミアの隣を歩むフェンリルに向かって抱きつこうと、勢い良く両腕を伸ばした。ただ身の危険を察知したフェンリルは、すぐさまその場から逃げた。
中々着いて来れない展開に、目を点にしてエルザを見つめる。
「なんでよぅ〜!貴方は私の相棒になるはずだったのぃ〜〜!!なのに、なのにっ!なんでこんな面倒な男と契約交わして、よく分からない召喚士に心許すの?!こんなに私は愛してるのにっ!」
今にも泣き出しそうなエルザは、逃げるフェンリルの後を追いかけて走り出す。
突然始まった鬼ごっこに騎士達は気づくことなく、息を上げて木剣を振るっている。
「えっと……?」
状況把握が出来ない中、ミアの隣にやってきたリヒトが面倒くさそうに溜め息を零す。