へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
ぐったりと横たわる魔獣達に近づいて、触診を始めるハイロンの表情はやや険しい。
そして、フェンリルの檻の中に入り、身体のあちこちを触診して見つけた何かに声を低めた。
「……これは――」
原因が凡そ分かったのか、顎に手を添えて考えるハイロンの横に邪魔にならないようにして立つ。
「ハイロン、何か分かったのか?」
「はい。彼らは植魔の毒に感染しています」
「植魔……?」
聞き慣れない言葉を聞き返すと、ハイロンはフェンリルの足首の毛を上げ、皮膚を見せる。
何かに締め付けらたような跡が赤く熱を帯びている。黒色の内出血のような痛々しい跡も、足の根元にまで伸びていた。
「っ……!」
「植魔の毒にやられて、壊死の一歩手前まで来ています」
その事実に、大きな石で頭を殴られたような衝撃が走る。立っているのが出来なくなったミアは、よろけながらその場にしゃがみ込む。
……嘘……だって、今までそんな素振り見せなかったのに、一体どうして……?
荒い呼吸のフェンリルの頬を震える手で撫でると、その毛並みはいつものように絹のように滑らかだった。
傍に一番長く居たのは私なのに……私がちゃんと皆のこと見てないからこんなことに!
世話役として彼らの体調管理を常に行ってきたというのに、遅すぎる発見に自分を叱責する。もっと早い段階で見つけられたはずだというのに、それが出来なかった自分が憎くてしょうがなかった。
「ごめん、ごめんね……みんなっ、ごめんねっ――私のせいで、こんな……こんなっ!!」
止められない涙を流しながら、フェンリルを撫でる資格はないとその手をそっと離した。こぶしを握り、力強く床に叩きつけようと勢い良く振るう。
「やめろ」
振りほどく事が出来ない強さで、リヒトが自分を傷つけようとするミアの手首を掴んだ。