へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
震えるミアの目を見て同じ目線になるようにしゃがむと、落ち着かせるように涙を拭った。
ひんやりとした彼の手に取り乱していた心が、まるで酷く波打っていた水面が一瞬にして波をかき消すように、心に普段のミアを引き戻させる。
「自分を責めるな」
「でも……」
「そうですよ、ミアさん。この毒の症状は、ゆっくりと出現するものではありません。爆発するかのように突発的に症状が現れるのが特徴的です。きっとこのフェンリルも何かかしらの違和感はあったでしょうが、痛みを抱えていた等の問題はなかったと思います」
リヒトの言う通り、自分だけを責めてはいけないとハイロンはミアを諭す。
二人に宥められ、我に返ったミアは大きく深呼吸をして、気持ちを整える。
「フェンリルもミアにはよくしてもらっているからその恩を自分も返したいと、向こうから俺に心を開いてきた」
「フェンリルが……?」
「ミアの役に立ちたいその気持ちだけで、こいつは一歩踏み出した。そんなお前が泣いていると知ったら、もっと無理をするだろうが」
リヒトの言う通り、ここにいる魔獣達は甘えるばかりではなく褒めてもらいたいからと突き進む。
ミアが嘆き悲しむ姿を見たくないと、無理をするのも容易に想像できた。