へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
だからこそ自分が泣いてはいけないのだと奮い立たせ、ハイロンの言葉を待つ。
落ち着きを取り戻したミアに、彼は一つ頷いた。
「絡みついた跡からして、魔物討伐の時に何らかの形で植魔に襲われたのでしょう。この手の毒は解毒剤と回復薬を混ぜた薬を服用させれば、良くなります」
「絡みついた跡……。もしかして、この前のゴブリン討伐の時にフェンリルの動きを止めた蔦、あれが何か関係が?」
「その可能性は高いな」
「この植魔の毒は、微粒な胞子を撒き散らします。我々人間には何ら害はないのですが、魔獣から魔獣へと伝染するんです」
「だから皆一気に……」
「召喚したばかりの魔獣は、別の場所に避難させておいた方がいいな」
フェンリル達を襲う毒の正体が分かり、次の準備へと取り掛かろうと、リヒトの腕を支えにしながら立ち上がる。
こうして支える側に立ちたいと思っていたはずなのに、また彼に助けられている。
お礼か、謝罪か、どちらを口にしようと迷っていると、乱暴気味に頭を撫でられる。
「やれる事、やるんだろ?迷ってるなら、動け」
「はいっ!ありがとうございます!」
追いかける背中はいつも大きくて届く距離にあるというのに、やはりまだまだ届かない。届きはしない。そう思っても、彼を追いかける気持ちは消えはしなかった。
別の檻で心配そうに見つめているヒポグリフ達に外に出るように檻から出すと、エルザが獣舎目掛けて息を切らして走ってきた。