へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
現時点でフェンリルの状態はまだ良くなっていないと声を掛けようとしたが、彼女の目にはフェンリルは映っていない。
「調査部隊より伝令よ!魔物の群れが精霊の森より出現!!団長っ、すぐに出動命令をっ!!」
声を荒らげるエルザは手に持っていた文書をリヒトに見せつけて、ほんの僅かで乱れた呼吸を整える。
文書を受け取ったリヒトは、周りにいた騎士達を見渡し一つ頷く。
「これより魔物討伐に向かう。現状、魔獣を連れての行動は取れない。かなり長い戦いにはなると思うが、これまで通り俺の剣となれ――俺を信じて着いてこい」
低く鋭い声を聞き、その言葉に震えない者は居なかった。
獣舎外で待機していた騎士達は一斉に動き出し、上に立つに相応しい人物に向かって、拳を胸に当てた。
「「はっ!!」」
夕方の疲れもまだ残っているというのにも関わらず、彼らは身支度を整えるべく騎士舎に向かって走り出した。その姿を見届けながらも、リヒトも動き出す。
無謀すぎる彼らの行動に、危険だと引き止めるように彼を呼び、思わず駆け寄った。
「団長……!」
「ミア、魔獣達のことは任せた」
「……」
自分も着いて行きたい、それは皆の命を更に危険に追い込む行為。我儘を言って、誰かの犠牲を出す事だけはしたくはない。