へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
「大丈夫。皆笑顔で帰って来れるように、私が何とかするから」
まずは身の安全を守ることだと教え、獣舎の外に出して落ち着かせるように軽くブラッシングをする。
外での待機を任せ、胞子が拡散しないよう獣舎の全ての窓と扉を閉めた。
「ハイロン先生、皆の容態は?」
せっせと魔獣達の治療に当たるハイロンに声を掛けると、少し難しそうな声音で唸る。
「応急処置までは何とか出来たのですが……薬を調合するのに肝心な薬草がないので、この子達の回復力を願うしかない、と言った所です」
「薬草、ですか?」
「はい。魔獣に効果のある薬草となると、市場では中々手に入らないものばかりでして。魔獣用の風邪薬や傷薬は持ってきてはいたんですけど、まさか植魔の毒とは予想外で……」
持ってきた僅かな物で懸命に手当てに当たるハイロンは、不甲斐ないと肩を落とす。
こうも緊急事態となれば、街で薬草を取り扱う店も閉店せざるを得ない状況だ。増してや、魔獣に効く薬草を取り扱っている店もほとんどない。ハイロンに戻って薬を取ってきて貰ったとしても、馬を走らせ数刻は掛かる。
「ちなみになんですけど、その薬草ってどんな薬草ですか?」
一か八かの賭けで、騎士舎の医務室にもしかしたらあるかもしれないという希望を胸に尋ねる。
「”マンドラゴラ”、という少々厄介な薬草です。それがあれば持ってきた薬と上手く調合すれば何とかなるんですけど……」
溜め息を零すハイロンだったが、ミアは今までの努力は無駄ではなかったと自分を褒めながら、魔法陣を描く。