へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 そこに何の迷いもない彼女は、召喚術を発動させた。

 一度召喚したものであれば、その感覚は確かにミアの中にあるのだから。例えそれが失敗で掴んだものだとしても、今は違う。

 突然何かを召喚した彼女の姿に、首を傾げていたハイロンだったが、魔法陣の上に現れたそれに瞳を輝かせた。



「マッ!マンドラゴラ……!!召喚で喚び出せる類のものではないというのに……!!」


「ハイロン先生!これでお薬作れますか?!」


「もちろんです!ああ!やはり貴方は噂通りすごい方ですね!」



 手渡したマンドラゴラにやや興奮気味のハイロンは、瞬く間にマンドラゴラを他の薬と共に調合していく。

 その姿を見つめるミアの視線に、ふっと小さく笑う。



「魔獣医として長いこと勤めて来ましたが、こんなにも魔獣と向き合う召喚士と出会ったのは、初めてです」


「ただ、私は自分のやれる事をやっているだけですよ」


「それが凄いことなんですよ。他の召喚士が使役するはずの魔獣を手懐けるなんてこと、普通じゃ有り得ませんから」



 手際良く調合しながら、視線を絡ませるようにちらりとミアを見たハイロンは優しく微笑みを向けた。


「どんな魔獣とも心を通わせ、道無き道を切り開いていく姿は、賢者ロベルツのようです。きっと貴方なら、この先の未来も大きく変えていってくれる。僕はそう信じていますよ」

「……はい!」


 ハイロンの瞳に宿る灯火がミアの瞳にも灯され、彼が言う通りに作業を進めていけば、どんどんと夜は耽っていく。








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