へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
さあ出来た、と調合し終わって完成した薬を、水に溶かして、魔獣達の口に含ませる。
規則正しい呼吸で眠る魔獣達には、もう痛々しい痕は何処にも見当たらない。
後は安静にしていれば大丈夫だと、気が緩んだハイロンは獣舎の壁に身体を預けて睡魔に支配されていた。その間もせっせとミアは、魔獣達の楽な体勢に整え、濡れたタオルで身体を拭きあげて彼らに安楽を与え続けた。
私はここに居るよ……だから、安心してね。
想いを込めながら、時折優しく撫でて頬を擦り寄せると、魔獣達はどこか安らかな表情を浮かべた。
僅かに夜空に輝く星の光が薄れてきた頃、バケツの水を組み換える為に井戸に向かう。この空の下で今騎士達は、リヒトは戦っている。
どうか無事でいて欲しいと強く願いながら、獣舎へと戻る途中、その声はミアの耳にしっかりと届いた。
『ミア』
手に持っていたバケツを思わず手から零れ落ちるのも関係なしに、ミアは獣舎へと走った。
息を切らしながら檻の中を見れば、綺麗な瞳で彼女を見つめるフェンリルがいた。
「フェンリル……!」
フェンリルが嫌がると分かっていても、彼に抱きつくと小さく鼻を鳴らした。