へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
感じる力の方角はぼやけてはいるが、迷うほどでもない。
フェンリルに礼を言って、一人で突っ切ろうとするミアだったが、彼に行く手を遮られる。
『流石にミア一人では危険だ。オレも着いて行く』
「駄目よ!フェンリルも団長の元へと行って。あの人は意地でも一人で戦おうとするから」
『……怪我でもしたら承知しない』
「それはこっちも同じセリフよ。大丈夫。あなた達のお母さんは強いんだから!」
安心させるというよりも、勇気を貰うようにフェンリルに抱きつくと、彼を優しく撫でる。
優しい温もりに心地の良い毛並み。
ここまで頑張って来れたのも、彼のお陰だ。
「大好きよ」
『死に際の最期の言葉みたいな事言うな』
「本当の事を言いたかっただけ」
『それはあんたの想い人にでも言え。それともなんだ?オレから言っておいてやろうか?お前みたいなクソ獣人の事が好きだって』
サラリと吐き出したフェンリルの言葉に、動揺を隠すことはできない。
どうして気づかれたのか、ミアに分かることは到底不可能だろう。