へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
逃げて敵を欺ければいいが、必ずどこかでヘマをするのが自分だというのはよく知っていることだった。
端からどうにかなる精神を持っていたら、きっと命はないと慎重さを選ぶ。
転がる魔物の懐から短剣のようなものが見え、意を決して魔物に手を伸ばす。
亡骸とは言え、こんなに近くに魔物がいるというのは生まれて初めての事で緊張感が走る。
「とっ……取れた……!」
急に生き返って襲いかかってきたらどうしようと思っていたが、完全に息の根は止められていた。
護身用で手に入れた短剣で怪我をしないように、制服のベルトに差し込むと、声を頼りに一歩ずつ前へと進む。
完全に朝日が昇りきっていない森に立ち込める微かな霧が、視界を遮ってくる。身を眩ませるのに丁度いいと言えばいいが、逆に敵の襲撃にも対応出来なくなる。
頑張って目を凝らしながら奥へと進むと、キンッと痛む甲高い音が耳を蝕む。歯を食いしばって、両手で覆うように耳を塞いだ。
「いっ……」
音のせいで頭までも響くように痛みが伝わってきて、呼吸を整えるようにその場に軽くしゃがみ込んだ。