へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





 今のは、一体何?




 泣き喚く悲鳴のような声に、不思議と胸が痛む。痛みに耐えて立ち上がって周囲を見渡すと、空は黒く染まっていた。

 全てを覆い尽くすように魔物が、空を支配しているのだ。

 遠くの空で飛行部隊が魔獣を操り、弓を放つ音が風に乗って聞こえてくる。この場にいるのが意図も簡単に魔物にバレるのも、時間の問題だ。

 どうにかして神獣の居場所を突き止めなければと焦るミアに、吹き荒れる風と共に真っ白な霧が彼女の周りを取り囲む。



「誰?誰かいるの?」



 森の奥から揺れる影は霧に揺れて、ハッキリとは見えない。ただそこに誰かがいる気配だけが、ミアに伝わってくる。



「時間がない。迷わず、真っ直ぐおいで」



 それは、知らない優しい声。

 知らないはずだというのに、安心感を与える声に妙に心が落ち着いた。



「奴がそなたを探している。見つかる前に私の元へおいで。そなたの気配は消しておくから」



 その声が今までハッキリと聞こえてこなかった、神獣の声だと分かるのには、そう時間はか掛からなかった。

 揺れる影は、今にも薄れて消えそうだ。









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