へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
一刻も早く神獣の元へと向かわなければと、影を目印に走り出す。
悲鳴のような魔獣達の咆哮に振り返りそうになるが、両手で頬を叩く。
「しっかりするのよ、ミア。私にはやるべき事がある」
足を取られそうになる地面を強く蹴って、前だけを見つめた。
揺れる魔物の群れの影も視界に映り込むが、気配を消してあるお陰で、魔物はこちらに近づいてこようとはしてこない。
こんなに近くに魔物がいるというのに、不思議と恐怖心は湧いて来なかった。
絶対に見つからないんだから!
息を潜めつつ、時には魔物の股の間を通り抜け、何とか魔物の群れから遠ざかるように進む。
そうして足場の悪い森の中をとにかく進んでいくと、崖に取り囲まれた拓けた場所に出た。
「はあっ……はあ……」
中心に大きな苔むした岩を守るように、枯れ果てた湖が静かに眠っていた。
周囲では剣戟の響きが聞こえてくるというのに、ここだけは空間を切り取られたかのように静寂に包まれていた。