へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





 背筋を伸ばして聞く体勢を整えたミアだったが、これから何を説明されるのか検討もつかない。



「まず初めに質問するね。召喚士が召喚する魔獣の存在……あれは何?」



 まるで授業中に指名されたかのような緊張感が走るものの、基礎中の基礎の内容は落第生のミアでも分かった。



「召喚士が召喚する魔獣は、千年前に賢者ロベルツが邪神の加護を持つバハムートとの戦闘の際に召喚した神獣達の末裔で、唯一魔族に打ち勝つ力を持つもの達です。私達召喚士は、魔獣の持つ魔力と共鳴する事によって、始めて召喚が出来るようになります」



 スラスラと今まで学んできた知識を披露すると、ユネスは小さく拍手をしてミアを賞賛した。

 彼の隣に座るリヒトは何を当たり前の事を……と小さくボヤくが、ユネスは気にせず話を続ける。



「正解。じゃあ何故、リヒトを召喚してしまったのか、彼を見て気づくことはない?」


「えっと……それは」



 ユネスの次の質問に対して言葉を濁した。人とは違う姿をしている彼を見て、動揺する気持ちばかりが膨れ上がる。

 ただこの話の流れ的には、多分そういう事なのだろうとダメ元で一つの考察を口にする。



「もしかしてリヒト騎士団長は、その……獣なん……ですか?」


「目の前にいる俺が、普通の人間の姿をしているというなら、お前の目は相当の節穴だな」



 鋭く睨みつけられて、身を縮こませて反射的に頭を下げる。フサフサとした可愛らしい耳と尻尾があっても、相手は鬼畜な騎士団長ということを忘れてはいけない。

 ミアは今にも震えそうな身体を誤魔化しながら、頭を上げてユネスに話を続けるように促した。



「ミアちゃんの言う事の通りで、リヒトは人じゃない。いや……“僕ら”というべきか」


「え……?」


「単刀直入に言おう。僕ら第四部隊の騎士は神獣達の血が流れる末裔。言わば『獣人』なんだ」


「獣、人……」



 おとぎ話で何回か聞いた事のある程度の存在に、上手く言葉の意味を咀嚼することができなかった。






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