へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 何もないはずなのに、川のせせらぎや鳥のさえずり、虫の声に風の音……雄大な自然がそこにあるような感覚に包まれる。




「ようやく会えたね。ミア」




 泳ぐように近づいてくる白竜の翼の柔らかさに、触ってもいないのに顔を緩ませていると、小さく笑われる。



「ふふふ……君はやはりロベルツにどこか似ているね」


「えっ?!賢者様に、ですか?」


「”全ての魔獣”を愛し、寄り添う――それが彼だった。そんな彼と同じ目をしている」



 まさか自分が賢者と似ているなんてことを言われる日が、想像出来ただろうか。

 第一、この世に賢者を知る者はもう何処にもいない。

 ただ一人ここに残された白竜だというのに、寂しさを感じられない。

 ミアの思うことを察したのか、ゆっくりと頷いた。



「私は彼からたくさんの愛を貰ったからね。そんな彼が愛した世界を、私も”彼”も守りたいと強く思うよ」


「力を、貸してくれる……?」


「その為にミアをここに呼んだんだ。どうか、私を縛り付ける鎖を解いてくれ」


「鎖……?」


 詳しく聞こうと思ったが、空間が大きく揺れる。







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