へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
亀裂が何処からともなく入り、逃げ惑う生きとし生けるものの悲鳴が響き渡った。
「契約を結ぶよ、ミア。鎖を解き放ったその時、全てを教えよう」
パラパラと崩れていく空間から逃すように白竜は、光の渦へとミアを押し出した。
身体の力が抜ける……そう思った途端、足の裏に地面を感じた。我に返り、周囲を見渡せばバハムートが岩を壊そうと攻撃を繰り出していた。
それを防ぐように騎士と魔獣達が、懸命に戦っている。
バハムートは影を更に取り込み、先程見た時よりも体を大きくさせ、力を取り込んでいた。
「鎖……鎖……!」
言われた言葉を頼りに、鎖らしきものを探すが苔むした岩にはそれらしき物は見当たらない。
バハムートがすぐそこにいる以上、迂闊な行動を取ったら怪我所ではない。
どうしたものかと慌てふためいていると、ぐいっと腰を抱き上げられ、再び足が地面から浮いた。
「わっ……!!」
とんっと体を支えられる温もりに目を向ければ、フェンリルの背に乗ったリヒトがミアを抱き上げていた。
「どうやら、互いに苦戦しているようだな。始末書の件はとりあえずなしにして、協力するぞ」
「団長っ、あの岩に近づいて貰えませんか!」
「何かあるのか」
神獣である白竜の存在があの岩の中にいること、そしてその力を解き放つ鎖があることを手短に話す。