へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
その身はバハムートの遥か上を飛び越え、グリフォンが起こす風に乗って更に遠くに飛ぶ。
キラリと輝く赤い石が見え、ミアは腰のベルトに差し込んでいた短剣を手にした。
体を抱き締めるリヒトの温もりをまだ感じていたかったが、甘えすぎも良くないと喝を入れる。
ただ気持ちを知った今、お返しだと言わんばかりにミアはリヒトの襟を掴んで、顔を近づけた。
――ほんの一瞬、時間が止まった感覚に、ミアは溢れる想いを唇に込めた。
「……!」
「団長!行ってきます!!」
唇に感じたリヒトの頬の感触に、勝ち誇った笑みを浮かべつつ、彼の腕からするりと抜け出した。
声にならないリヒトの息を振りほどき、高く飛んだフェンリルの背から落ちるように、岩の魔石目掛けて、短剣を突き刺した。
「いっけぇええー!!」
欠け零れた短剣が放った鋭い音と共に、粉々に砕けた魔石から眩い光が溢れ出し、バハムートが苦しそうに吼えた。