へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
『召喚した主が思い出したかのように、我に世界を滅ぼすように命じてきた。憎き人間を、この世の全ての理を主に与えられた闇の力で滅せと。ただ我は、彼が愛した世界を壊したくは無かった』
一粒の涙を零したバハムートの影が、涙によって浄化されるように本来の姿を映し出した。
蠢く闇は薄れ、そこにいるのは綺麗な瞳を持つ一匹のドラゴン。片翼を失っても尚、空を制する風貌は消えてはいなかった。
『主の命には逆らえない。なら闇魔法を全て取り込んだ、我が身諸共封印すれば事なきを得ると』
「大切な家族を失いたくないと泣き叫んだロベルツだったけど、バハムートの気持ちを組んで封印を選んだ。この世界を、大切な家族を守るために。これが――真実だよ、ミア」
知っている賢者ロベルツの物語とは全く異なり、本当の物語はバハムートが彼を想うために生まれた悲しい物語。
そして愛する彼が好きだった、この世界を守るための英雄譚だったのだ。
『再び我が復活する時、万が一闇が残っている場合に備えて、彼と同じように魔獣を愛する召喚士に託すべく、末裔に白竜が力を与えた。それを受け取ったのが、あのフェンリルという事だ』
「……」
『導きを託し、白竜を喚び出したお主に感謝する。まだ闇の力は残っているが、こうしてまた彼が愛した世界を壊さずに済む。さあ、白竜。再び我の封印を――』
「ちょっと待って!!」
覚悟を決めたバハムートに、真剣な眼差しで見つめる。全ての過去を出来事を知った今、ミアにはある想いが強く芽吹いた。