へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
そんなリヒトが、何かを思いついたかのように質問を投げかける。
「魔獣の餌……そういやお前、ここに来るまで何も無かったのか?」
「は、はいっ。特にこれと言って何も……」
騎士舎に入る前に何か飛び出して言ったぐらいで、魔獣に遭遇する事も命の危険を感じることもなかった。
そこに関しては、ミア自身も同じように疑問を抱いていたくらいだ。
「確か訓練所で、数匹魔獣を外に出していなかったか?」
「ああ……そういえば、匂い覚えの訓練をしている部下達がいたね」
「その魔獣が吠えたりは?」
「いや?特に聞いてないけど?」
「おかしい……なんで魔獣達が反応しない?これまでの召喚士達は取って食われる魔獣達の勢いに負けて、敷地に入ってすぐに怖気付いて退職届を出す輩が多数だったというのに」
「お陰で、現在進行形で召喚士不在なんだからミアちゃんを脅かさないでくれる?」
顎に手を添えて考えに耽るリヒトの姿がまるで絵画の中から飛び出してきたかのように美しく、吐き出す恐ろしい言葉がなければ間違いなく魅入っていただろう。
ただ、ミアは恐ろしい言葉の中に新たな疑問を抱いた。
「あの……ここって私以外に召喚士いないんですか?」
「ああ。常に求人募集をしてるくらい人手不足だからね。そう滅多にやって来ないけど」
「えっ、でもどうして魔獣達がいるんですか?召喚士いないんですよね?」
召喚士は召喚した対象と契約を結び、この地に喚び起こす。契約を結んだ対象は、召喚士と共に生涯を歩む習性がある。