へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
綺麗な淡い赤い羽から、魔法陣が浮かび上がるや否や、風を切るように羽ばたく音が森全体にこだました。
「不死鳥《フェニックス》……」
眩い炎の光は沈む太陽のように赤く、息を飲む程に美しかった。
伝説上の不死鳥が、今目の前でミアに何かを感謝するように目を細めた。
不死鳥の持つ魔力の光が加わった今、矛先眩しい光を宿し勢いを、皆の想いを乗せ、闇を葬るために鋭さを増した。ピシリと鈍い音が聞こえるや否や、盾に亀裂が入るのをミアは見逃さなかった。
「みんなを……私は守ってみせる!!」
魔力を白竜に注ぎ込むと、光の槍は闇を打ち砕くように一瞬にして貫いた。
槍として形を保てなくなり弾けた光の粒が、バハムートを蝕んでいた闇を浄化させていく。
「もう悲しい想いなんて、絶対にさせない」
白竜の背から飛び降りて、もがき苦しむバハムートを包み込むように抱き寄せた。
力を失ったバハムートは、みるみるうちに胸に収まりきる程の小さな子供ドラゴンへと姿を変えていく。
解き放たれた闇の力は全て浄化され、枯れ果てた森は再び命を吹き返し、青々とした緑が視界いっぱいに広がった。
着地する間際で、グリフォンの風魔法により無事綺麗に着地したミアは、抱き締めるバハムートの澄んだ瞳を覗いた。
「おかえり、バハムート。ロベルツが愛した世界に帰ってこれたね」
『ああ……ただいま』
バハムートは照れくさそうにそう呟くと、遠慮がちにミアの頬に鼻を擦り付けて小さく甘えた。
遠巻きに様子を伺っていた魔獣達だったが、あまりの羨ましさに、我も我もと甘えた声でミアの元に一目散に集まり始めた。
「わっ、ちょっと!みんな、そんなに押さないで!」
一度に集結した魔獣達を前に目を丸くするが、甘えて飛びかかって顔を舐めてくる魔獣達に白旗を上げる。擽ったい気持ちと、皆を守れた安心感で心が満たされていく。
そんなミアを見て嬉しそうに微笑むバハムートを祝福するように、不死鳥が羽ばたく翼から光を零しながら去っていく。
魔獣達と手と手を取り合う召喚士に、明日という未来に希望を託すように、昇る太陽に向かって姿を消した。