へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
どちらにせよ、リヒトを甘やかしては第四部隊にも影響が出てしまう。心を鬼にして、部屋から出ようとするが、我慢出来なくなって自らリヒトの元へと向かった。
「これから頑張るご褒美、ですからね」
小さく呟きながら軽く触れた唇の感覚に、顔を赤く染める。
「ずるいぞ」
「私は団長の主、ですから」
「懐古の月が終わったら、この立場を逆転させてやるからな」
本気の目に思わず怯むと、部屋の窓が軽く叩かれる。
ふと窓の外を見れば、屋根の上で寝そべるフェンリルの姿がそこにあった。
一連のやり取りを邪魔しないようにしていたのか、それともこれ以上は見ていられないと動いたのか。
獣舎の方を見て、鼻を鳴らして屋根の上から飛び降りた。彼に続くように、光り輝く神獣と寄り添う片翼のドラゴンが空を舞う。
「どうやら、みんなが呼んでるみたいなので私も仕事に戻りますね!」
今度こそ踵を返して部屋を出ようと扉を開けたその時、名前を呼ばれた。
振り返ったミアに、ふっと笑ったリヒトは自信満々にこう言った。
「好きだ」
「ちょっと団長……!反則です!」
「命令には逆らっていない。俺はミアに触れてないだろ?」
「〜〜もうっ!私も大好きですっ!!」
ミアの愛の告白は扉が開いていた事により、今日も今日とて騎士達の耳にも届いていく。
魔獣達も負けじと、ミアを愛していると言うように甘えた鳴き声が、平和な王都に響いていった。