へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
「……あーえっと、取り込み中っすか?」
苦笑いを浮かべる彼も同じ制服を着ていることから、騎士団に所属しているのだろう。まだあどけなさが残る顔に、どうやってこの場を凌ごうかと焦る表情が滲む。
「シュエル」
「はっ、はい」
「自分の正体を、自ら晒し上げるような行為は慎めと前にも言ったよな?」
「はい……」
自分の事を棚に上げて怒りをぶつけるリヒトに、シュエルと呼ばれた青年は分かりやすく、しょんぼりと獣耳を垂らした。彼の気がリヒトに注ぎ込まれ気が緩んだのを逃さなかった、腕の中に囚われていた白いもふもふはモゾモゾと動いて見事に脱出する。
一目散にミアの元へと駆け寄ってくるや否や、身を隠すように長椅子とミアの背中の隙間に顔を埋めた。
「ん?!」
慌てて背中からもふもふを取り出すように抱き上げると、つぶらな瞳を潤わせた白い熊――スノウベアの子供が必死に助けを求めるように鳴いた。
「ふぎゅうぅ……」
「かっ!可愛いぃい……!」
生まれて初めて見るスノウベアに、興奮したミアは瞳を輝かせて周りを気にせず感情を露わにした。