へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
魔獣達との過ごす時間が長くなれば長くなるほど、ようやくミアは彼らに懐かれているのだと知った。
最初は控えめに甘えてきたというのに、今はミアが獣舎に来た途端一斉に起き出して、彼女の温もりはまだかと求める目を向けてくるようになった。
「順番だよ〜順番」
ブラッシングの時が一番酷い。
一匹の魔獣が気持ち良さそうにしているのを、他の魔獣は羨ましそうに見つめてくるものだから、どうも心苦しくなってしまうのだ。
かと言って手を抜くことは絶対にしないミアは、一匹ずつ丁寧に時間を掛けることは辞めなかった。
配属してから七日目、完全にミアに懐ききった魔獣達だったが、一向に懐かない一匹のフェンリルに頭を抱えていた。
シュエル曰く、この獣舎の中で一番長いことここで生活していて、一際人間を嫌っているという。
魔獣に懐かれているミアにでさえ、威嚇行動は一切してはこないが、他の魔獣に比べて全く言う事を聞いてくれないのだ。
「ブラッシングさせてくれる?」
「ガルル……」
「うー……毛並みも綺麗になるし、絶対気持ちいいのに」
今日もその毛並みにブラシを通すことが叶わなかったミアは肩を落としながら、フェンリルを散歩に促した。
唯一散歩だけは言うことを聞いて檻から出てくれるものの、常に手綱をグイグイと力強く引っ張ってミアを振り回す。
あまりの力の強さに顔面から転ぶが、心配した素振りも見せずに、早く立ち上がれノロマが。と視線を送り付けてくる。
「んもー……」
服に着いた土を払いながら立ち上がり、頬を膨らませてフェンリルを見るが、いい気味だと嘲笑うような目をしていた。