へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜



「お前も、何をそこでサボっている」



 いつの間にかすぐそこでリヒトの声が聞こえるや否や、整った綺麗な顔立ちが目の前にあった。



「ひっ……!」


「このフェンリルに手こずっているようだな」


「まあ……はい」



 フェンリルの散歩で出来た手のマメを慌てて隠しながら、正直に頷いた。

 綺麗なアイオライトの宝石のような深い蒼がミアを見つめては離さない。迂闊にもその瞳に飲み込まれそうになるのを堪えて、ミアは現状を報告する。



「まだこの子だけ懐いてくれなくて……」


「強さを教えないから舐められるんだろうが。第一そう焦って懐かれようとしなくともいいだろう。少しは自分の力量を考えろ」


「確かに上下関係は必要な場合もありますけど、まずはこの子達との間に信頼関係を築かないことには意味がありません。自分には確かにまだまだ落ち度はありますが、彼らに怖がらせるようなやり方は絶対に私はやりたくありません」



 傷ついたこの子達にそんな乱暴は出来ないと、リヒトの意見に思わず歯向かう。リヒトの逆鱗に触れようが、ミアはこの子達の気持ちを分かって欲しかった。

 案の定リヒトの眉間にしわが寄るが、フェンリルが突然自分から獣舎の方へと歩き出した。慌てて後を追いかけるようにしながら、リヒトに頭を下げて退散する。

 小さくリヒトの舌打ちが聞こえた気がしたが、フェンリルが一つ鳴いてその音をかき消した。


 ……もしかして、あの場から助けてくれたり?






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