へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
「大丈夫、皆は強い騎士達よ。私が動揺してたら、魔獣達も不安がっちゃう」
ミアは言い聞かせるように呟いて、やりかけの仕事に取り掛かる。自分がやるべき事はこうして魔獣達の世話をすることだと、奮い立たせるように小屋へと移動して、藁の香りを肺いっぱいに取り込んだ。
皆が帰ってくる前に一通りの仕事を終わらせて、出迎えてあげよう!皆、ビックリするかな。
藁を取り替えながら、落ち着かない様子の魔獣達を宥めるように撫でると大人しくなった魔獣達は、ミアに擦り寄った。
ただどうしても胸のどこかで落ち着かない気持ちのあるミアは、魔獣達に伝わらないように下唇を噛み締めた。
不安からくるものでもなく、何かの感情と一致しているかのようにその感情は流れてくるようにミアの元へとやって来る。
『ああ、どこに行ってしまったの?お願い、無事でいてちょうだい……』
周りには誰一人としていないはずだというのに、ミアにはしっかりとその声が脳内に直接聞こえてきた。誰とも知らぬ声は焦りと不安が入れ混じった感情が、痛いほどに胸に溢れてくる。
「今のは……?」
「ピヨヨッ!」
突如、獣舎外から可愛らしい鳴き声が今度は耳から聞こえたミアは、驚きつつも振り返ってその鳴き声の持ち主を探した。
陽の光を浴びながら、風と共に舞う白い蝶をぽてぽてと二本の足で追いかける黄色いモフモフとしたヒヨコが、芝生の上を楽しそうに駆け巡っている。