へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜



 召喚した召喚獣が中で訓練することもあり、まるで砦のようなどっしりとした建物には威厳さえ感じる。

 門の周りには人を寄せ付けない空気が流れる中、ミアは己を信じて前へと進む。

 門番に封筒に同封されていたバッチを見せ、いよいよ中へと入ると後ろから囁き声が薄らと聞こえてきた。



「まだ幼い女の子だっていうのに、可愛そうに……」


「この前の召喚士は三日も持たなかったしなあ」


「奴らに喰われないといいけどな」


「馬鹿、聞こえるぞっ」




 門番達の囁き声を見事に聞いてしまい、身の危険を感じるがもう後戻りは出来ない。

 ここまで来たら聞こえなかったフリをして、勢任せで足を進め門を通り抜ければ、青々とした芝生が広がる広い敷地に佇む、石造りの堅牢な騎士舎がミアを待ち構えていた。

 騎士舎を囲う地面には様々な獣の足跡の痕跡があり、大きく地面が抉れている所まである。魔獣がいる痕跡に、自分以外の召喚士がいることにとりあえず胸を撫で下ろすが、抉れ方を見て自然と身体が震えた。


 まさか……魔獣を野放しにしてるとかそんな分けないわよね?


 敷地内に入った以上何が起こってもおかしくないと抉れた地面の横を通り過ごして、騎士舎の扉へと急ぐ。ただ妙に静かすぎる空間と感じた違和感に、少し足を止めて周囲を確認する。








< 5 / 202 >

この作品をシェア

pagetop