へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
振り返った拍子に、鋭い蛇の尻尾が銅像目掛けて飛んできたかと思えば、そのまま粉々になって吹き飛ばされた銅像の破片が足元に転がってきた。
きっ、危機一髪……!!
あのままその場にいたら自分の体も真っ二つになっていたと冷や汗をかきつつ、負の感情で我を失っている母親コカトリスを茂みの隙間から様子を伺った。
「もしかして……私が誘拐したとか勘違いされてたりする?」
このまま母親コカトリスの正気を取り戻さない限り、襲われる可能性がある。かといって、ヒヨコだけを親元に帰したところで、我を失っていては我が子にまで怪我をさせてしまい兼ねない。
落ち着かせる方法を考えるよりも先に、ミアはヒヨコを地面に下ろして、額を撫でながら待っててねと声を掛けてゆっくりと立ち上がる。
「ちょっとお母さんのこと愛でてくるね」
首を傾げるヒヨコに笑いかけたミアは、足音を立てないようにそっと母親コカトリスの正面を避ける立ち位置へと移動する。
その間にミアを見つけた母親コカトリスだが、先程のように襲ってこようとはしない。
一か八かの実家の近くの牧場で飼ってたニワトリさんへの懐かれ方法が、まさかこんな所で役に立つなんて……!
牧場主のおじさんが愛して止まないニワトリ達の秘伝の懐かれ方を、幼い頃に伝授してもらっていたのだ。コカトリスに通用するかどうかは、賭けだったがどうやら野性的な鳥としての習性は一緒らしい。
警戒心が強い野生の魔物に対して、大きな動きや素早い動きは敵だと判断されやすいため、自分を敵だと認識されないようにゆっくり、ただゆっくりと歩く。
歩いてたどり着いたのは、店主は避難したであろう新鮮な野菜が並べてある露天商。非常用に携帯していたお金を店の机において、葉野菜をいくつか購入する。
母親コカトリスと視線を合わせないよう目を閉じながら、野菜の葉を一枚ずつちぎり、ただ向こうの動きを待った。
自分に敵意はないことをしっかり伝えなきゃ、あの子を帰せない。お願い、食べて……。
野菜を見つけ、害がないかどうかを疑う目を向けると、徐々にミアに近づいてくる。一歩、また一歩と近づいてくる気配に、静かに息を飲んだ。