へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
正面から突っ切ろうとしてくる騎士達を止めようと動き出した次の瞬間、地面が揺れた。
「コケェエエッ!!!」
立派な赤い鶏冠を揺らし、低く芯のある太い鳴き声は風を巻き起こし、舗装された道を簡単に貫き通す鋭い爪が、道に亀裂を入れた。親コカトリスよりも二回りほど大きな体からは、殺意すら感じる。
――振り返った先には、もう一匹のコカトリスが、敵意を剥き出しにして羽を大きく広げていた。
「お父さん……ですか?」
攻撃性の高い雄のコカトリスを前に、どうすることも出来ないまま、ミアの心を恐怖が支配した。騎士達も突然のことに怯んだのか、動きを止める。
ダラダラと涎を垂らす父親コカトリスに、自身を餌だと思われていると悟る。基本的にコカトリスは草食だが、相手は魔物。人を食らうことも少なからずあるのだろう。
為す術もなくミアは睨みつけてくる父親コカトリスに従うように、その場で身動きを取ることなく固まっていた。
こうなるなら、もう少しちゃんと考えて行動するべきだった……!
魔物相手に自分一人で立ち向かえるわけがないと分かっていたはずなのに、と今更後悔が滲む。
ミアを丸飲みにしようと父親コカトリスが大きく嘴を開け、喉の奥には真っ黒な暗闇が見えた。
その暗闇をかき消すような白がミアの前に現れて、大きく吠えた。