へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
『やめておけ。そいつは美味くはないぞ』
ハッキリと聞こえた声に耳を疑いつつも、白いモフモフがミアを庇うようにしながら父親コカトリスから距離を取らせた。
「コケッ!」
『お前の妻もそう言ってる。森に帰れ』
「コケコケコケコココッ!」
母親コカトリスが前に出たかと思えば、尻尾で力強く父親コカトリスの体を強打する。よくある夫婦喧嘩の一部を見ているようで、先程まで流れていた緊張感はどこかへ消えていた。
怒りに染まっていた父親コカトリスは、痛みによって我に帰ったかと思えば、身体を小さくさせて大人しくなった。
「コケッ」
「え……?」
夫婦揃って頭を下げ、母親コカトリスが羽づくろいをしたかと思えば、綺麗な淡い赤い羽をミアに差し出して来た。受け取って欲しいと瞳で訴えられたような気がして、その羽を手に取ると母親コカトリスは嬉しそうに鳴いた。
「ピヨ!」
ヒヨコも嬉しそうにミアの足の周りを数周駆け回ると、母親コカトリスの背に乗った。
三羽揃うと、大きな羽を広げて、街を流れる風に乗るように大空へと羽ばたいて行ってしまった。