へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
門番達も緊急事態に応援要請がかかったのか、不在にするにあたって門が封鎖されていた。
彼らの帰りを待とうとするミアに、またしても先程聞いた声が掛かる。
『乗れ』
「……」
『中に入るんだろ』
どこを見渡しても人影は見当たらない。こんな恐れられた第四部隊の騎士舎に、用もなければ誰も近づこうとはしない。
そんな中、はっきりと横で声が聞こえるのだ。
「……フェンリル、もしかしてあなたが喋ってる?」
『オレ以外誰もいないだろ。さっさと乗れ』
今にも噛み付いてきそうな苛立ちを見せるフェンリルに、慌てて背に跨ぐ。体勢を整える前に、フェンリルは足にグッと力を入れ、軽々と門を飛び越えて騎士舎の芝生の上へと着地する。
青々とした芝生は今日も綺麗に風に靡いた。フェンリルの背から滑り落ちるようにして降りると、柔らかい地面の感覚に心が落ち着いていく。
軽く身震いして優雅に獣舎へと戻るフェンリルに着いていきながら、確認するようにもう一度同じような質問を投げかけた。
「フェンリル、あなた喋れたの……?」
『……』
「……あれ?待って、今までの私の幻聴?」
うんともすんとも言わないフェンリルに、とうとう疲労が蓄積された結果が現れたのかと頭を抱えた。