へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
抉られた地面は明らかに真新しく、今朝方出来たものだと言ってもおかしくはない。
ここまで大きな魔獣の足跡が残っているのにも関わらず、その魔獣の気配はどこにもない。
「……侵入者だと判断して襲ってきても、何ら不思議ではないのに」
縄張り意識が強く、仲間と判断した対象にしか懐かないのが魔獣の特徴だ。
ミアが来るということを配慮して、しっかり管理してくれているのか、はたまたまぐれか。
どちらにしろ今は危険が潜んでいないことに安堵の息を零しつつ、再び騎士舎へと足を向ける。
重たい扉をいざ目の前にして急に心臓がうるさくなり、緊張で肩に力が入る。
……どうか、初日でヘマしませんように。学校を卒業したとは言え、元落第生ってバレたら即クビ確定なんだから。
何度も私は立派な召喚士と心の中で唱えつつ、召喚士の証であるバッチをキツく握りしめてから、ドアノブへと手を伸ばす。
中へ入ろうとしたその時――ミアの動きよりも先に白い何かが扉を打っ放して一目散に外へと飛び出して行った。
「いっ、今の……何?」
今までの緊張感がどこかへ吹き飛ぶ程の勢いで、白い何かは姿を何処かへ消してしまった。