へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
こうしている時間も、魔獣達のことを常に考えて、彼らが持つ力を発揮させるために動くしかない。ミアはユネスにお礼を言って、再び獣舎へと戻る。
気持ちよさそうに寝ていた魔獣達はミアの足音を目覚まし代わりにゆっくりと起きて、おかえりとでも言うように小さく鳴いた。
ぐるりと一周檻の中にいる魔獣達を見て、一つの檻へと近づいた。
「ちょっとだけ、いいかな?」
頭が三つあるケルベロスの檻の前に立ち、首輪を着けて獣舎の外へと出す。散歩と勘違いしたのか、どこか嬉しそうなケルベロスを優しく撫でる。
ポケットに入れていたハンカチを取り出し、ケルベロスに匂いを嗅がせて、その反応を見る。
「この匂いを覚えて、今から私がこのハンカチを隠すから取りに行って欲しいの」
そう伝えて準備する間はフェンリルと違って、待てが出来るケルベロスに指示をすると大人しく座りミアの様子を伺っていた。
茂みに隠したハンカチを風で飛ばされないように縛り付けて、準備を整え終わるとケルベロスの元へと向かい、もう一度指示を出す。
「さっきのハンカチを探してきてくれない?」
「???」
「匂いを辿って、取ってきて欲しいの」
三つの顔がこてんと首を傾げる愛くるしい仕草に、ミアは正解を教えたくなる衝動をぐっと抑えた。