へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 何度も説明と指示を繰り返すが、クーシーのように探索をしようとしないケルベロスは、ミアの匂いを嗅いで三つの顔がそれぞれ喉を鳴らすように小さく吠えた。

 恐らくミアの匂いはここにあると伝えようとしていることを悟ったミアは、苦笑するしかない。

真っ直ぐに向き合って教えたつもりだったが、全く指示は入らない。試行錯誤しても上手く行かず、日は徐々に傾いていく。


 ダメかあ……。同じ犬種族の魔獣だから上手くいくかなあって思ったんだけど。


 考えに付き合ってくれたケルベロスに、ミアは全力で撫で回してありがとうと気持ちを伝える。



「まあ、そんなすぐに出来るわけないもんね。地道にやっていこう」


『残念だが、アンタにはそれは出来ない』


「えっ?」



 声の主を探すように辺りを見渡せば、いつの間にか獣舎の外に出てきて、日向ぼっこをしているフェンリルが芝生の上で寝そべっていた。


 当たり前のようにそこで寛いで居るものだから、気配すら感じられなかったのだ。



「フェンリル?!あなたどうやって檻の外に……!」


『それは教えない。別に脱走する気もないから安心しろ』


「というか、何でさっきは会話してくれなかったの?!」


『面倒だったから、それだけだ』



 ふんっと鼻を鳴らしたフェンリルは、そっぽを向いて風を感じるのを楽しんでいる。








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