へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
後を追いかける理由も無いミアは気を取り直して中へと入り、意外にも手入れが行き届いた室内に口をぽかんと開けた。
荒々しい噂しか聞いてこなかったせいで、建物内も酷い有様を想像していたが、案外そうでもないらしい。
遠慮がちに辺りを見渡しながら、ここからどこへ向かえば良いのか分からず、もう一度手紙に目を通そうとしたその時だった。
「ワフッ」
「っ……!」
突如聞こえたその鳴き声に身体を震わせながら声のする方へと視線を動かすと、二階へと続く階段の踊り場でお行儀良く座り込む、一匹の大きな灰色の犬がミアを見つめていた。
愛らしい瞳にフワフワな毛並みを見て、ミアの心は一瞬にして高揚する。
かっ、可愛い〜〜!!
幼い頃から動物と戯れて育ったミアにとって、この場の天使と言っても過言ではない。
今にもその毛並みを確かめるべく飛びつきたくなる気持ちを抑えて、ニヤけてしまう顔を抗うのに必死なミアに犬は小さく首を傾げた。
その仕草でさえ、ミアには興奮のあまり声が漏れそうになる。
こんな場所に愛くるしい子がいるなんてっ……!なんかもう仕事頑張れる気がしてきた!!
動機はともあれ、抱えていた不安がかき消された事により身が軽くなるのを感じていると、犬がゆっくりと腰を上げた。