へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 獣人が住む村のことや、家族や大切な人。これまでの騎士としての仕事の話。得意なことや苦手なこと。気さくに話してくれる彼らに、距離感がぐっと近づいた気がした。

 そのお陰で、グリフォンと心を通わせようとした騎士は、高いところが苦手ということが分かり、空を飛ぶグリフォンにはそれが伝わって拒絶し合ったのだと紐解いた。

 こうして話していくうちに、魔獣達との相性のヒントが次々と見つかっていく。

 ミア自身も自分のことをぽつりぽつりと話した。召喚士に憧れた幼き頃の話から、学生時代の話。そして……自分があまり召喚術が上手くないこと。

 いつか本当の事を話さなければいけないと、どこか負い目を感じていたのだ。この機会を逃したら、ずっとこの場に居づらい気持ちを抱えていくことになると。



「……なんか、騙すような感じでここで働いてしまってすみません」


「そんな気にしないでよ。学園を出たばかりの召喚士なんて、経験もなければ術もあまり安定しない子がほとんどなんだから」



 震えそうになる声を我慢して事実を話したミアに、ユネスは彼女の背中を撫でるように優しい声音で包み込んだ。



「で、でも……昨日、私が居たらいい魔獣を召喚してくれるって、ユネスさん言ってたじゃないですか」


「あーあれ?それはもちろん。だって召喚殺しの異名を持つ獣人しかいない騎士団だっていうのに、健気なミアちゃんは逃げずに頑張ってるじゃないか。そんな子が成長しないわけないでしょ?」



 小さく笑うユネスは、端からミアが召喚術が苦手なことを知っていたのだ。周りの騎士達もユネスの意見に同意だと、首を縦に振ってくれていた。

 期待されているという事実に、目頭が微かに熱くなる。
 

 私……もっと頑張らなきゃ!!


 温かい気持ちに包まれながら、その日の訓練はとりあえずお試しということで、解散になった。








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