へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
翌日からミアは魔獣達との時間だけでなく、仕事の合間に騎士達の元にも足を運んだ。
訓練の様子を見て、どの騎士がどんな立ち回り方が得意なのか、何を苦手とするのか。それを知った上で、魔獣達の特性を調べ上げ、相性の組み合わせに試行錯誤を繰り返す。付き合いを続けて一週間も経てば、何となく相性が見えてきていた。
それだけでなく騎士達にも協力を仰いで、少しでも人馴れするように魔獣達と接する時間を作ってもらった。日を重ねる毎に、怯えていた魔獣達も徐々にだが警戒心を解いていく。
「おお〜前に比べて近づいてきてくれたぞ!」
「俺なんか、お辞儀を返してくれたぜ」
「賢い奴らばかりだな〜」
ミアのようにベッタリと懐く様子はまだ見られないが、騎士達も心を開き始めた魔獣達に、嬉しそうな笑顔を浮かべるようになった。
微笑ましい光景だなあ〜。まあ、後は……。
奥の檻に顔を向けると、騎士達に背を向けて眠るフェンリルの姿がぽつりとあった。今回の訓練を提案した張本人だというのに、依然頑なに人間を嫌っている。
無理強いはさせるつもりもないミアは、彼も時間を掛けて人馴れさせていこうと計画を練ることにした。
あっという間に騎士達の休憩時間も残り僅かになり、一番人馴れしているスノウベアを檻から出して、散歩がてら騎士達を訓練場まで見送ることにした。
「ミアちゃんがここに来てから、色々と変わったなあ」
「そうなんですか?」
「魔獣達の世話係で揉めたりとかあったからさ。その分、平和になったというか」
「心が穏やかになった。うん、すごく穏やかになった」
「団長も何か変わったような?」
「何かと訓練場にも顔出すようになったよな。冷や汗止まんねえけど……」
リヒトに怯えるのは自分だけではないんだと苦笑しつつ、訓練場に戻っていく騎士達を見送り、気持ちいい風を浴びながら、人気のない道を選んで散歩する。