へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
尻尾を緩やかに左右へ振ると、ミアをチラリと伺い階段に足を掛けた。
様子を伺うように犬を見つめるが、一向に階段を登ろうとはせず、再び短く吠えミアに視線を送り続けていた。
「もしかして、案内してくれるの?」
「ワフッ」
得意気な表情を見せる犬にクスリと笑みを零して、大舟に乗ったつもりで犬に着いて行くことにした。
一段一段踏みしめて階段を上り、ガーネット色の絨毯が敷かれた廊下を歩いて辿り着いた扉の向こうからは、唯ならぬ空気が漏れ出していた。
中からは何やら男性の声が小さく聞こえてくるものの、会話まではハッキリと聞こえない。
大事な話し合いの途中で、遮るように入り込んじゃったらどうしよう……。
恐る恐るここまで案内してくれた犬に助けを求めるが、自分の役目はここまでだと犬は扉のすぐ横に伏せ、チラリと扉に目配せをしたかと思えばそのまま瞼を閉じた。