へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜


 騎士と魔獣の足音が一つに合わさって、大地を揺らしている。聞いたことがないというのに、どこか心地良さを感じる。

 そんな彼らの足音に心安らいでいたのもつかの間、予想外な声が上から掛けられた。



「こんな所でサボるとはいい度胸だな」


「ひっ!」



 目を開ければすぐ横にリヒトが立っていて、動き出そうとするミアを逃がさまいと隣に座り込んできた。

 制服のスカートの裾を下敷きにされ、動くに動けなくなったミアは、身を縮こませることしかできない。

 二人並んで訓練に励む騎士と魔獣達を見つめながら、ドキドキと鳴り響く心臓がやけにうるさく感じるのはどうしてだろうと首を小さく傾げる。おまけに触れた肩から伝わってくる彼の熱に、せっかく冷ました体温がまたしても上昇する。



「団長は、その、どっどうしてここへ?」



 気を紛らわそうと口を開くが、動揺する気持ちまでは抑えられなかった。



「部下達全員の訓練相手をしているんだ。俺にだって、休憩は必要だろうが」


「そ、そそ、そそうですよね!」



 まるで休憩をするなと上司に文句を言ってしまっていることに繋がりかねない質問に、慌てて口を閉ざした。

 ふんと鼻を鳴らすリヒトに震えていると、流れてくる風に、彼のシルバーブロンドの髪が綺麗に波打った。盗み見るように見上げるが、見つめれば見つめるほど、美しさを放つ彼にミアは無意識に見惚れてしまう。


「お前のお陰でこの部隊が一つになった。礼を言う」

「え……」


 いきなり言われた感謝の言葉に返す言葉を探していると、リヒトの目と合った。








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