へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
誰からも助けの手を伸ばされないこの場で突っ立っていてもしょうがないと、意を決して扉を叩く。
挨拶は最初が肝心よ。負けない意志を表せば、生き抜いていけるはず。
「入れ」
凛とした男性の声が返ってきて、一呼吸置いてからゆっくりと扉を開けた。
ミアの視界に飛び込んで来たのは、執務机の上に山のように積まれた書類に取り囲まれる、整った顔を歪ませた一人の男の姿だった。
ミアとは異なる全身を黒に染め上げた制服には、魔獣騎士団所属の証であるバッチと勲章が着いていることから、この男が騎士団長で間違いなさそうだ。
彼を前に思わず息を飲んだのは、威厳ある風貌の持ち主が騎士団というのが判明したせいか、はたまた男性としての美しさを前に動揺しているのか。
鼻筋が通った端麗な顔立ち、切れ長な目の奥で瞬く海の底で光を乱反射させるような、艶やかで深いアイオライトのような瞳。滑らかで絹のようなシルバーブロンドの髪が、窓から降り注ぐ光を集めていた。
すごい綺麗な人……。
生まれて初めて見る美しさに射抜かれたミアは惚けて挨拶もろくに出来ぬまま、最初の遅れをとってしまい団長から睨みつけられ、その場で硬直するしかない。