叶わぬ恋ほど忘れ難い
地元の私立大学に進学し、何事もなく過ごしていた、二十歳の冬。成人式で久しぶりに同級生と再会した。
特定のグループに属していたわけではないが、誰とでも仲良くしていたと思っていた、のに。地元のホールに集まった同級生たちは、かつて自分が属していたグループで集まり、その輪に入って挨拶をしても、なんともそっけない。ちらりと視線を向けただけで、挨拶すらしてくれない子もいた。
見ればそこかしこで数名ずつのグループを組み、振袖や化粧を褒め合い、服やスウィーツやアイドルの話をしている。まるで、中学生の頃の教室の風景を見ているようだった。
中学校の卒業式以来、五年ぶりに会う同級生がほとんどだったけれど、彼女たちはその年月の経過で、わたしを「同級生」から「他人」へと変えてしまったらしい。昔どれだけ仲良くしていても、連絡を取り合わなければ、関係がゼロに戻る。特に女の子の世界では有り得ない話ではない。
わたしの地元のように田舎なら尚更。出来上がって安定しているコミュニティの中に他者が気軽に入りこむことは、なかなか難しいのだ。
分かってはいるけれど、これが、今日成人を迎えた大人の、正しい姿なのだろうか。
軽いめまいを感じていると、見知らぬ男性が話しかけてきた。すらりと背が高く、一重まぶたが涼しげな青年だった。
ここにいる以上同級生に変わりはないが、どうしても思い出せない。
必死に記憶を辿っていると、青年は一重まぶたの目を細めて楽しそうに笑う。
「一度も同じクラスになってないもんね。俺、宮澤。柔道部だった。昔はチビで勉強もできなくて遅刻癖もあっておまけに人見知りだった」
言われてようやくはっとしたけれど、記憶の彼と一致しない。五年の間に随分と背が伸び、大人っぽくなったせいだ。
宮澤くんは高校を卒業後、県北の会社に就職したらしい。わたしよりずっと背が低く、人見知りで無口だった彼が、当時ほとんど接点がなかったわたしに話しかけてきたということは、人見知りは克服したらしい。
それを皮切りに、何人もの同級生が声をかけてきてくれた。みんな学生時代は話したこともない人たちばかりだった。
話をしているうちにその全員が、実家を出て、県内外の企業に就職したり、大学で寮生活を送っていることを知った。中には高校から寮に入ったため、地元での思い出があまりないという子もいた。
東京、神奈川、千葉、埼玉、静岡、兵庫、京都に、北海道まで。今までわたしが一度も行ったことがない場所に、同級生たちは住んでいる。今までわたしがどれだけ狭い世界で生きてきたか思い知らされて、外の世界に興味を持った。
わたしもこの狭い田舎から出て外の広い世界を見たら、今より少しはましな大人になれるだろうか。過去の繋がりなんて気にせず、形成したコミュニティの中に他人が入ることを受け入れ、一人の大人として社会に出て、歩いて行けるだろうか。
そこからは早かった。月が変わる前に大学を休学し、この二年で貯めたアルバイト代と共に、地元を飛び出したのだった。