貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「はぁぁ⁈」

そして、耳をつんざくようないっちゃんの叫び声が聞こえてきた。

「ちょっといっちゃん! 声大きいよ! なんで驚くの?」

てっきりいっちゃんも、とにかく婚約まで持ち込みたいのだと思っていた。けれどこの驚きよう。どうも違うらしい。

「俺はとにかく見合いさえすればいいって……。つうか、創一は? そこにいないのか?」
「ええと。主任のこと、だよね? 今はちょっと出てるよ」

電話の向こうではこちらまで息が届きそうな大きな溜め息が聞こえてくる。でも私は、全く別のことを考えていた。

下の名前で呼び合うほど仲良かったのか。……って、入社式のとき、みー君の様子がおかしかったのは、それを知っていたからじゃないんだろうか?

「与織子……」
「何?」
「もしかして……創一と……。付き合ってたのか?」

落胆したような声で尋ねられ、私は「はいっ?」と変な声を上げる。

「なっ、わけないでしょう? 話し合いの結果そうなっただけで……」

いっちゃんは詳しい話を聞いてないのだろうか。経緯を話そうか、と口を開いたとき、ドアがノックされ、デザートを乗せたワゴンと共にスタッフさんが姿を現した。
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