貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
主任は自分の席まで戻ってくると、立ったまま置かれた皿を持ち上げ、私のところへ持って来た。

「俺は食べない。お前が食え」

そう言って私の前にそれを置くと、返事を聞きことなく席に戻っていった。そして盛大な溜め息と一緒に座ると、コーヒーを口に運んだ。

「何か……あったんですか?」

部屋を出て行く前はそれほどでもなかったのに、今は明らかに不機嫌だ。さすがに気になって尋ねると、主任は傾けていたカップを皿に置いた。

「一矢に……もう喋っただろう。凄い剣幕で電話が架かってきたんだが」
「あ、っと。はい。相手を教えてくれなかった文句を言おうと思って……」

私が小さくなりながらそう答えると、主任はまた息を吐き出した。

「一矢は知らなかったみたいだな。見合いだけだと思った、婚約ってどう言うことだ! だと。事情を説明しろと喧しいから電話を切ったが」

様子が目に浮かぶようで、「すみません……。そんなすぐに連絡が行くなんて思ってなくて」と、私はより体を小さくさせた。

「この調子じゃ、颯太も実樹もすぐに連絡寄越してきそうだ」

そう言って主任は傍に置いたスマホに視線を送っていた。

「やっぱり……みんなのことも知ってたんですね。いったいどう言う知り合いなんですか?」
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