貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
パーキングエリアで少しだけ休憩するとまた出発する。実家まではあと半分ほどの距離だ。

しばらく黙って外を眺めていたが、さすがになんだか居心地が悪い。

「主任は……誕生日、いつですか?」

唐突すぎただろうか?

前を向いている主任の横顔を見上げると、「なんでだ?」と返ってきた。

「婚約者なのに主任のこと、何も知らないなぁって。会社でもそんな話しないし。だから教えてください」
「……8月13日だ」

少し眉を顰めながら主任は言う。そして私は、「あ、そうだ」とスマホを取り出した。

「忘れないようにメモしときますね。じゃあ……血液型は?」
「Bだ」

私はそれをメモに打ち込みながら続けた。

「趣味はありますか?」
「あえて言うなら……ドライブだな。大学の頃に日本一周したことがある」
「えっ! 日本一周?」

画面から顔を上げてそう言うと、涼しい顔をして主任は答える。

「まぁ、観光などほとんどしてないがな」
「それはそれで凄いです。私なら寄り道しまくりそう……。次は……好きな食べ物は?」

なんだか尋問みたいになっている気がするが、私は主任に質問を続ける。

「別にこれと言ってないな。よほどでなければなんでも食べる」
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