貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
そう言う主任の顔も、至って真面目で、冗談には思えない。

「うちって……。主任のおうち?」

相変わらず間抜けな質問をしてしまい、主任は呆れたような顔になる。

「そうだ。あぁ、うちって言っても、実家のほうだから安心しろ」

ん? どうして実家が安心しろに繋がるんだろう? むしろ、全く安心できないのだけど。

「実家って、もしかしてご両親がいらっしゃるんじゃ……」
「もしかしなくてもいるだろう。早く連れて来いと催促されててな。特に母に」

主任はそう言うと、今度はとにかく面倒くさそうに大きく息を吐いていた。

「え、ええっ⁈ お母様にですか? 私、偽物ですよ?」
「偽物なのは承知の上だ。うちの親は、俺の婚約者じゃなく、朝木与織子自身に会いたいんだ」

ポカンと口を開けたまま私はそれを聞いていた。なんで私に会いたいのか、わからない。偽物にわざわざ会う? 婚約者じゃないってことは……

そうか。部下の顔見てみたいのか!

「は、はい。わかりました!」

私は姿勢を正して、そう答えていた。
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