貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
車で走ったのは、ほんの15分間ほど。すぐに都内の高級住宅地、それも豪邸が立ち並ぶようなエリアに入った。

そりゃあ、天下の旭河の社長のお宅だもの。想像以上の豪邸なんだろうなと察しはつく。
車は細い路地に入り減速すると、シャッターの閉まるガレージの前で停まった。かと思うと勝手にシャッターは上がり始めた。

うちの実家なんて、青空駐車場しかないのに凄い……

たぶんこれを口に出したら笑われるだけだから、私は真面目な顔を装い、心の中で感心していた。
ガレージには空いたスペースがあり、そこに車は入るとエンジンは停まる。
すでに緊張でガチガチになっている私を見て、それを察したように主任は呆れた表情を見せた。

「なんでそんな顔になるんだ?」
「も、もとからです!」
「まあいい。降りよう」

そう言うと主任はさっさとドアを開ける。私もワンテンポ遅れてそれに続いた。ガレージの隅にある扉を潜ると庭に出た。勝手に純日本の凄い庭が現れると思っていたのに、全く予想外の庭に、私は思わず声を上げた。

「凄い! 可愛いっ!」

春らしく色とりどりに咲き乱れるお花に、ところどころ動物の置物が顔を覗かせている。秘密の花園にでも迷い込んだような、そんなメルヘンチックとも言える庭だった。
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