貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
創ちゃんが社長室のドアをノックしているのを、私は横から眺める。そういえば、社長室に入るのはこれが初めてだ。中から返事が聞こえ、創ちゃんはドアを開けるといつもの感情の読み取れない顔のまま入って行った。
「お寛ぎのところ、お時間をいただきありがとうございます」
創ちゃんのあとに続いて中に入ると、すぐ目の前の応接セットには社長と専務が向かい合ってコーヒーを飲んでいた。テーブルには松花堂弁当の木箱が置いてあり、さっきまで食事をとっていたのがわかる。
「改まって話とはなんだい?」
コーヒーカップ片手に社長は創ちゃんを見上げる。その顔はどこか訝しげだ。
それにしても、社長と専務は本当に似てない。社長はそう背が高いわけでもないけど横には大きい。どこか焼き物のタヌキを彷彿とさせる。専務のほうは、それなり背が高く細身。目が細くて、ちょっとキツネっぽい。親子だと聞いたときはそれなりに驚いたものだ。
「朝木さんまで一緒とは、何かトラブルでも?」
細い目をいっそう細くして、鋭い目つきで専務も私達を見上げ言う。
「私がついているのに社長に報告するようなトラブルなど起こりえません」
創ちゃんは少しムッとしたようにぶっきらぼうに答えから続けた。
「プライベートなことですが、まず社長と専務にはお伝えしておこうと思いまして」
わざと明るめの口調でそう言う創ちゃんに、社長と専務は眉を顰めている。
「プライベート?」
「ええ。この度、私川村と、ここにいる朝木与織子は婚約いたしました」
創ちゃんの少し後ろに控えていた私に2人の視線が向き、慌てて私は一礼した。それから顔を上げると、向こう側には口を開けて唖然としたままの社長と専務の顔が見えた。
「なっ! なんだと⁈」
我に返ったのか、社長は荒げた声を上げる。
「何か問題でも?」
そんな社長に臆することなく、創ちゃんは涼しい顔で返している。
ちょっと……いや、かなり怖かった。
「も……問題はないが、それは正式な話かね? まさか君の作り話じゃないだろうな」
「お寛ぎのところ、お時間をいただきありがとうございます」
創ちゃんのあとに続いて中に入ると、すぐ目の前の応接セットには社長と専務が向かい合ってコーヒーを飲んでいた。テーブルには松花堂弁当の木箱が置いてあり、さっきまで食事をとっていたのがわかる。
「改まって話とはなんだい?」
コーヒーカップ片手に社長は創ちゃんを見上げる。その顔はどこか訝しげだ。
それにしても、社長と専務は本当に似てない。社長はそう背が高いわけでもないけど横には大きい。どこか焼き物のタヌキを彷彿とさせる。専務のほうは、それなり背が高く細身。目が細くて、ちょっとキツネっぽい。親子だと聞いたときはそれなりに驚いたものだ。
「朝木さんまで一緒とは、何かトラブルでも?」
細い目をいっそう細くして、鋭い目つきで専務も私達を見上げ言う。
「私がついているのに社長に報告するようなトラブルなど起こりえません」
創ちゃんは少しムッとしたようにぶっきらぼうに答えから続けた。
「プライベートなことですが、まず社長と専務にはお伝えしておこうと思いまして」
わざと明るめの口調でそう言う創ちゃんに、社長と専務は眉を顰めている。
「プライベート?」
「ええ。この度、私川村と、ここにいる朝木与織子は婚約いたしました」
創ちゃんの少し後ろに控えていた私に2人の視線が向き、慌てて私は一礼した。それから顔を上げると、向こう側には口を開けて唖然としたままの社長と専務の顔が見えた。
「なっ! なんだと⁈」
我に返ったのか、社長は荒げた声を上げる。
「何か問題でも?」
そんな社長に臆することなく、創ちゃんは涼しい顔で返している。
ちょっと……いや、かなり怖かった。
「も……問題はないが、それは正式な話かね? まさか君の作り話じゃないだろうな」