貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
扉を閉めると、創ちゃんは部屋の中を見渡してから私の元へツカツカとやってきた。私はハッとして、広げたままのお弁当箱に慌てて蓋をした。

「与織子! 体調が悪いって清田から聞いた。大丈夫か?」

そう言いながら私を見下ろす創ちゃんは、急いで来ましたとばかりに息を切らせて、髪も少し乱している。

そんな演技……いらないのに……

顔を見れなくて、視線を外しながら私は卑屈なことを考えてしまう。誰もいないなら、演技する必要はない。私のことなんか心配してるフリなんていらない。次から次へと溢れ出るネガティブな感情に潰されそうだ。

「大丈夫です。もう食事も終わったので席に戻ります」

そう言って慌ててお弁当箱を保冷バッグに入れ直す。

「顔色悪いぞ? 無理しなくていい」

心配そうな声を頭上で聞きながら、「大丈夫ですから」とぶっきらぼうに返す。

「だが……」
「本当に大丈夫ですから!」

ついイライラしてしまい、声を荒げて立ち上がる。

「あ……」

立ち上がった途端、目の前が真っ白になり、さぁーっと血の気が引いていくのが自分でもわかった。

「与織子!!」

崩れ落ちそうな体を支えられた気配がして、遠くで私の名前を呼ぶ声がした。けれど、そこで一旦私の意識は途切れていた。
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