貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
2か月間、一度も鉢合わせしたこともないし、どんな人かもわかっていない。でもいっちゃんが『姿を見ないように』と言うのには、きっと理由があるはずだ。
どうしよう? 部屋に戻ったほうが……
真っ白になった頭で慌てていたけどもう遅かった。両手にお鍋を持ったその人は、キッチンからダイニングへ出てきてしまった。
「わっ! びっくりしたぁ!」
いないはずの私の姿を見て、その人は声を上げた。でも、私はそれ以上に驚いて声も出せず、下げていたバッグが手から滑り落ちドサリと音を立てたのを聞いて、ようやく我に返った。
「な、なんで……あなたが……」
震える声でそう呟く私に向かって、その人は『あちゃぁ』と言いたげな、バツの悪そうな、でも本当に悪いとは思ってなさげな表情を見せた。
わけがわからない。なんでこの人がここにいるのか。
その場で立ち尽くしていると、指先がすうっと冷たくなる感覚がして、私はその場に崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「与織子ちゃん⁈ 大丈夫?」
お鍋をテーブルに置くと、慌ててこちらにやって来て私の顔を覗きこむその人から顔を背けながら私は答える。
「……大丈夫、です。枚田さん……」
私はそれだけ言うのが精一杯だった。
どうしよう? 部屋に戻ったほうが……
真っ白になった頭で慌てていたけどもう遅かった。両手にお鍋を持ったその人は、キッチンからダイニングへ出てきてしまった。
「わっ! びっくりしたぁ!」
いないはずの私の姿を見て、その人は声を上げた。でも、私はそれ以上に驚いて声も出せず、下げていたバッグが手から滑り落ちドサリと音を立てたのを聞いて、ようやく我に返った。
「な、なんで……あなたが……」
震える声でそう呟く私に向かって、その人は『あちゃぁ』と言いたげな、バツの悪そうな、でも本当に悪いとは思ってなさげな表情を見せた。
わけがわからない。なんでこの人がここにいるのか。
その場で立ち尽くしていると、指先がすうっと冷たくなる感覚がして、私はその場に崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「与織子ちゃん⁈ 大丈夫?」
お鍋をテーブルに置くと、慌ててこちらにやって来て私の顔を覗きこむその人から顔を背けながら私は答える。
「……大丈夫、です。枚田さん……」
私はそれだけ言うのが精一杯だった。