貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
時計を確認すると、夕方5時を回ったところだ。3時間近く寝てしまっていたようだ。着替えもせず横になっていたから、着ていた服はくしゃくしゃだ。きっと顔も酷いだろう。

少しスッキリした頭になり、立ち上がると着替えた。それからお手洗いに向かい、化粧を落として顔を洗った。

鶴さ……、じゃない、澪さんは帰ったよね?

さすがにお腹も空き、私はダイニングへ向かった。テーブルの上にあったタッパーは片付けられていて、見慣れた、整然としたダイニングキッチンに戻っていた。

「――だから! あなたがはっきりしないから私たちが結婚できないんでしょう?」

遠くからそんな声が耳に入ってきた。その声は間違いなく澪さんだ。ここからはすぐに見えないリビングのほうからその声はした。 

いったい誰と……?

身を隠すように静かにリビングを覗く。コの字に配置されたソファ。そこに見えるのは澪さんの横顔と、誰かの後ろ姿。
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